悪いことを書く時は、書名を挙げないことにしたのを寸前で思い出した。
岩波科学ライブラリーの一冊なのだが、最初はなかなか現実を肯定的に捉えて、 若者に希望を持たせるような意見の本だと思ったのだが、最後の章で、 どういうわけかこの作者は実際にはそんな立場の人間は存在しないはずなのに、 そういう人間を仮に作って、その人間をメチャクチャにこき下ろすのである。 なんでかなぁ。仮にそんな人間がいたとしても、研究者としては存在しないも 同然なんだから、有害だとは思えないのだが。
やはり何か裏があって、ひも付きの研究で結果を捏造したとかそういうことを 言われたのではないか。そうでもなければここまで悪く言う理由がないと思うのだが。
万物理論【 bk1 / amazon / Yahoo! / 旭屋 / Jbook / 紀伊國屋 / 楽天 / skysoft 】読了。
自分で買った本。確かに未来社会の様子とか、恋愛とか、その他いろいろ 良いところがあって、途中まではいいなと思いながら読んでいたのだが、 俺にはどうしてもこの作品の中心となっているアイデアというか、 そもそもは現実にそんなことをいう人もいる訳で、 イーガンはその考えを更に論理的に飛躍させているのだが、 そこがどうしても好きになれないのだ。 もともとの考えも飛躍も。
たぶんイーガンもそんな馬鹿なことはないと思っているのではないかとは 思うのだが、それでもやはりこういう考え方はナチや日本の「うちの民族が 一番優れている」というような考え方とどこか近いような気がして 好きになれないのである。 ありえないことを書くのがSFだとも言えるが、 そんな馬鹿なことを……というように笑えないこともあるのだ。
っていうか、エピローグで言っているあることは、 この作品世界ではありえないと思うのは俺だけか。